読了 宮本輝『水のかたち』
またまた宮本輝です。
50代の女性が主人公。ごく平凡な主婦のように描かれているけれど、気がつけば不思議な縁を次々に引き寄せてしまっている。"あなたなら、あなただから"と人に思わせる魅力がそんなにあるようにも思えないのだけど・・・周囲の人物の方が魅力的にも思える。
善良ではあるけれど、とことんのお人好しというわけでもない。世間知らずのようでいて、人並みでない審美眼があるし、人間観察は確かだ。
読みながら彼女の言葉に引き寄せられる自分がいた。
38年働きながら私が身に付けたのはある種の"鈍感力"といって良いかもしれない。他人に対しても自分に対しても"おおらかに、鈍感に"接することで、余計な軋轢を生まずに済ませた気がする。
その時々の感情を細やかに言葉にしていては、必要以上に傷ついたり弱ったりしていたのではないか、そんな気がする。
主人公の女性のように、自分の感情を言葉にすることで、これから自分がどんなふうに生きたいのか、自分に問うことができるのかもしれない。
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