60代、日日是好日

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読了 吉田修一『愛に乱暴』


"愛は惜しみなく奪う"なんていう言葉を思い出しました。

うーん、これは誰の言葉だったのだろう?

早速ネットで。


有島武郎の評論の題名だそうです。"愛は与えるもの"という宗教的な概念を逆説的に使ったのだとか。




不倫の末に妻の座を奪い結婚した桃子が、数年後に不倫をされ、妻の座を追われようとする。因果応報と突き放してもよいのだけれど、なぜかそれはできない。


桃子は、愛を与えることができない人だったのではないか。それは夫も同じで、与えられることを当然と思う人。だから奪った愛を育てることができずに、同じことを繰り返す。


現実を受け入れず、奇行に走る桃子が強くも弱くも見える。救いのない物語である。