読了 酒井順子『うまれることば、しぬことば』
酒井順子さんといえば"負け犬の遠吠え"で脚光を浴びた一発屋(失礼😓)ぐらいの印象しかなかったのですが、この本を読んで認識を改めました。
言葉に対する感度の高さとそれを具体的に伝えてくれる筆力に感心しました。
気になった章をいくつか。
「自分らしさ」 "らしさ"を強制されなくなった若者が、正解のない"自分らしさ"を探すことに疲れ、もたれかかることのできる"枠"を求め保守化していくという見方、なるほどです。
「『陰キャ』と『根暗』の違い」 『キャ』とは『キャラクター』のこと。『陽キャ』も『陰キャ』も不変の性格ではなく演じているキャラというのに納得。筆者は若い頃の自身を『陽キャ』で『根暗』と分析している。私自身はというと、やや『陽キャ』で『根暗』かな。
「『セクハラ』という黒船」 1989年(平成元年)、セクハラを争点とした訴訟が発生。この年、新語・流行語大賞の金賞を得ていることから、この年をセクハラ元年と位置付けています。この語の広まりは、その後の「ハラ」語群を牽引し、日本社会を変えたとまで述べています。筆者が指摘するように、セクハラ元年以降に生まれたセクハラネイティブと私との間には感覚の違いがあることにも思い当たります。
これ以外にも、読み応えのある章がたくさんありました。
言葉の生死(誕生、流行、定着、衰退)を語りながら、同時に日本社会や日本人の性質にまで斬り込んでいる、そんな一冊でした。
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